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ハクチョウノミズウミ

日記やプログラミングの備忘録などを書きます。雑多なごった煮。

自己紹介代わりに旧ブログの記事を移植するシリーズ / ①二郎レポ

日記

この記事は旧ブログに投稿した文章をそのまま移植して「自分はこんなこと書く人だよ!」と自己紹介するものです。手っ取り早く記事数と閲覧増やしたいとかそういうわけではない

元記事はこちらから

 

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2015年11月10日 午前8時15分。
起床した私がスマホを確認すると、LINEの通知が一件。
今日一緒に夕飯を食べる予定だったのを、キャンセルしたいという旨の謝罪だった。
私は思った。

二郎、行こう、と。

二郎とは「ラーメン二郎」のことである。聡明な諸氏はもうご存知であるとは思うが、あのうどんみたいな麺にマッターホルンじみたもやしとキャベツ、そしてチャーシューなどという上品な言葉では表現できない豚肉の塊が、溢れんばかりに丼に詰め込まれたラーメンである。
ある人はそれを「ラーメンではない、二郎だ」と語り、またある人は端的に「豚の餌だ」と言い放つ。豚に失礼だと思う。
二郎は、東京の三田にある本店を皮切りに、修行を重ねた方々がのれん分けの要領で各地に展開し、店舗数を増やしてきた。そしてとうとう、(私の調査が正しければ)40店舗目となるラーメン二郎が、新潟に出来たというわけである。店長さんは松戸駅前店を切り盛りされていた方で、生まれ故郷に帰って二郎を展開したいとの思いで、この新潟に帰ってきたそうである。
このニュースを聞いた時は、「とうとう新潟にもあの有名な二郎が……」と思ったし、ラーメン好きとして行かねばならないと感じた。しかし、そこに壁が二つ立ちはだかる。

1. ラーメン王国と言われる新潟で受け入れられるような味なのか?

恥ずかしながら、そもそも私はいわゆる「二郎直系」と言われるところのラーメンを食べたことがない。だからこそ、新潟に開店した今、食べに行こうと思ったのだ。
しかしこの新潟は、月刊誌が毎年、しかも2ヶ月分も使って、新潟のラーメンを特集するレベルで、幅広いジャンルのラーメンが存在する、いわゆる「ラーメン王国」だ。美しいモデルや女優が飾る表紙が、この時だけはラーメンがアップでドン!と載る地である。新潟あっさり醤油(三吉屋)、長岡しょうが醤油(青島食堂)、燕チャッチャ系(杭州飯店)、そして(個人的には認めてないけど)三条カレーラーメン……実に様々なラーメン文化が根付いている。一方、新潟に新規参入してきたフランチャイズ展開のラーメン店である、幸楽苑と來來亭は形容しがたいほど不味い。幸楽苑は値段の安さで勝負していると思えば百歩譲って許せる。でもわざわざ行くくらいなら高いカップラーメンを買ったほうが絶対いい。來來亭に至っては語りたくないレベルで美味しくない。あんなもんネギでごまかしてるだけの醤油スープだ。新潟でコンスタントに客を獲得できているフランチャイズはおそらく三宝亭だけであろう。それだけ、新潟のラーメンのレベルは高いと思っている。そのような新潟に、ある意味どのジャンルにも属さない二郎が進出して、果たして県民の評価を得るのか?
しかし二郎はアウェイではない。「インスパイア」が存在するからである。その一つが「イエロー」である。ラーメンイエローは新潟大学近くに店を構える二郎インスパイア(店長は確か高田馬場の二郎で修行された方だったはず)で、二郎を新潟県民の舌に合うよう調整を加えたラーメンを提供している。私も並豚ニンニク少なめ、まぜそば大ニンニクアブラマシなど食べたが、とても美味しかった。店長は気さくで優しい方だし、店員もみんな元気のいい方々ばかりだ。非常に居心地のいい店で、今も新潟大学の学生を筆頭として客は絶えない。(最近まぜそばが土日にも提供されるようになったので、是非どうぞ)
他にもインスパイアとされる店は多数あるが、ともかく二郎にはそういったインスパイアで「ジロウナイズ」された人がたくさんいる。万人ではなくとも、一定の層の熱い支持を得るのだろう。だから私のこんな心配は間違いなく杞憂で、二郎を食べ慣れている人からは嘲笑されるのであろう。別にそれはいい。問題は次だ。

2. 二郎に対して自分が無知である

これが最大の問題である。2ちゃんねるの「初めて二郎行くんだけどアドバイスある?」スレに書き連ねられているあるんだかないんだかわからないルールを見て私は震えた。
食券買ったらどうすればいいの?ロット乱しとか言うけど大丈夫なのかな?みんな黒烏龍茶飲んでるけどマナーなの?特にトッピングに変更ない時って「そのまま」って言えばいいの?「ニンニク入れますか」にどう返せばそのままになるんだ?「ニンニクで」ってコールしたらそれ日本語として成立してなくない?天地返しってなんだよ?
もうこの時点で不安で仕方ない。私は二郎を生きて出られるのだろうか。右隣の客に豚で殴り殺されるんじゃなかろうか、左隣の客にカネシで目潰しされるんじゃなかろうか、店長に麺で首を絞められるんじゃなかろうか。
今から予定を変更してイエローに行くのは容易である。しかし決意した以上折れたくはない。涙目になりながらTwitterのレポートを確認し、ジロリアン諸氏のブログを確認し、大学の先輩に尋ね、予習を重ねた。
(こちらのブログのエントリーが非常に参考になりました)

と、ここまでが、大学に向かう電車の中で不安に駆られながら執筆した前置きである。後半は実際にラーメン二郎に行き、そして食した「レポ」をまとめていきたいと思う。

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午後5時45分。新潟駅から歩いて5分ほどの好立地に、目立つ黄色の看板があった。自分が並んだ頃の待機列には20人くらいいて、店内にも10人ほど。10分ほど並んでいただけで、自分の後ろに10人ほど並んだ。電車を1本早めてよかったと心から思った。おそらく二郎を知らないであろう歩行者が物珍しそうにこちらを見る。自転車に乗った人が足を止めて店内を覗き込んでいる。おじいちゃんが並んでいる人を質問攻めにしている。すぐ横の道路を走るドライバーが脇見運転をするのも致し方ない。
外は寒かった。気温は15℃なかったと思う。自分はウインドブレーカーを着ていたのでよかったが、コートを着てない人たちがつらそうにしている。後ろに並んだ大学生くらいの二人組が、スマホで二郎について調べているのであろう、「連席ダメだって、どうする?」という声が聞こえる。
列が少し進んで、ちらっと右にあるサントリーの青い自販機を見て笑った。2段目が全部黒烏龍茶。こんなのここにしかないんじゃないか。でも、今は黒烏龍茶より温かい飲み物の方が売れるんじゃないかな、という気がする。結局買わなかった、だって高いんだもん。

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並び始めてから30分ほど経った頃に、店に入ることができた。ラーメン小の食券を買う。店内の待ち椅子に座り、新しくカウンターが空くたびに右にずれていくうちに麺の量を聞かれ──なかった。初めてなので正直めちゃくちゃ不安になった。どうやら前の人と同じロットだったんだろうと思う。麺少なめにしていたので聞かれなかったんじゃないだろうか。
座席は12、道路と垂直に1~5番、そこから折れて平行に6~12番となっていて、全体としては "L" を左に倒した形になっている。自分は9番に座った。折れたところに給水器とレンゲがあって、ここまでは予習で知っていたので、荷物を置いてから取りに行った。なんでラーメン一杯食うのにこんなにそわそわしてるんだろう、と水を一口含んで思った。仕方ないのだ、自分の中の二郎はネットの知識で固められた、最高に厳格なラーメン屋だ。
首都圏の二郎に行きまくっている大学の先輩にアドバイスを請うたところ、「空気を読め」「よく観察してコールを待て」とのことだったので、しばし厨房の中を覗いた。黄色のタオルを頭に巻いた店長、豚を仕込む若いお兄さん、盛り付けるかわいいお姉さんがいた。店長は司令塔のように動いていて、二人に指示を出していた。そこにはネットで言われているような厳格さは感じなかった。不真面目にやってるわけじゃなくて、もっとアットホームな雰囲気。店長さんは助手の人と積極的にコミュニケーションを取って場を切り盛りしている。ここのバイト、楽しそうかも。
なんてことを考えつつ、座って5分くらいした頃、とうとうあの「瞬間」が来た。

「ニンニク入れますか?」

お姉さんが私を手のひらで指して尋ねる。前々から気になっていたことで、前段にも書いたが、「ニンニク入れますか」に「ニンニクで」と答えるのは日本語が成り立っていないのではないかと思っていた。でもそう答えなければならないとしたら、仕方あるまい。

「お願いします」

通った。そりゃあ相手は人間だし当然だよな、とふと思った。というわけで、コールはニンニクのみ。その10秒後くらいにカウンターから出された丼が、まさにその「二郎」であった。

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ラーメン二郎 新潟店 ラーメン小 ニンニク 700YEN

盛られたもやしとキャベツを一口。イエローで一度半生のもやしを出されたことがあって、少々不安だったので食べてみたのだ。いや、単に野菜でできた「マッターホルン」を制覇したくなっただけなのかもしれない。それくらい自然と箸が向いた。もちろん味はないけど、ちゃんと茹で上がっていた。キャベツが多くていい。
続いてスープを飲む。大きなアブラが浮いている。これが乳化というものなのか、と素直に感動した。イエローはほとんど乳化してなくて、スープを啜ると醤油でぶん殴られたような塩気にやられるのだけれど、これは強い塩気を豚の脂が包み込んでいて、幾分か食べやすく感じる。イエローの方は、新潟あっさり醤油の文化と乳化したスープは合わないと考えて非乳化にしたのかもしれないし、逆に二郎の方が、これから乳化具合が薄くなるのかもしれない。
豚はただただガシガシとしていて、おもだかやのチャーシューを思い出させた。自分はおもだかやのチャーシューがこの世で一番美味いチャーシューだと思っている(次点は侍元)。竹尾のおもだかやにかれこれ15年くらい通っているのだけど、あそこもガシガシとしていて、脂身がプルプルとしている。ただし二郎の方が明らかに分厚い。味はあんまり染みてなかったけど、まあこういうものなんだろう。
下から麺を引きずり出して啜る。醤油を吸ったのか黄金色に輝いていた。うどんのように太い麺だが、アルデンテのパスタのように小気味よく切れる。味が染みた麺ってくたくたなんじゃないか、と思ってたけど、いい意味で期待を裏切ってくれた。カップラーメンを表示マイナス1分で食べるくらいにはくたくたな麺が好きじゃないので、かなり自分好み。そういえば、自分の前にいた客が麺硬めを注文して「麺硬めやってないです」と言われていたけど、これで普通なら硬めだとちょっとキツそう。

2015.11.11 追記:

「麺硬めやってないです」と書きましたが、語弊があったので追記します。一度店長が麺硬めを承ったあと、麺を茹でてる助手さんとなにか話して「ごめんなさい、麺硬めできないです」とのことだったので、もしかしたらできる時もあるのかもしれません。

しばらく無心で食べていた。豚が冷たかったので野菜と一緒にスープに浸してしばらく麺を食べた後、そういえば豚2枚だったよな、と思って奥に箸を突っ込んでみると、出てきたのは、焼肉の豚トロとして出すべきじゃないのかと言いたくなるような大きな脂身だった。今回一番驚いた。歯応えがジャクジャクする脂身なんて、焼肉以外で初めて食べた。さらにこれまかないレベルの部位だろ、と頭を抱えたくなるくらい筋張った豚が出てきて、今回一番だと思った驚きをあっさり更新した。でも何も言わず食べた。
提供から10分後、気が付くと丼にあれだけ盛られていた具材は全て消えていた。イリュージョンでも見たような感覚だった。最後に残ったアブラをレンゲで潰しつつスープと一緒に飲み、さすがにしょっぱかったので少しスープを残したがほぼ完食し、丼をカウンターに上げてテーブルを拭いて、「ごちそうさまでした」と、自分でもびっくりするくらい透き通った声で言ってさっと店を出た。
1時間並んで10分で食べて、店を出た私の頬を、新潟の秋の夜風が撫でていった。私は言い様がない多幸感に包まれていた。口語的に言うとめちゃくちゃウキウキしていた。Twitterに写真とともに感想をアップロード。「ごちそうさまでした、と自然に声が出た。美味い不味いのレベルではなく、俺は満足できた」。急に寒さが沁みたので、ローソンで温かい綾鷹を買って、ニンニク対策にミンティアをドーピングした。かくして私の初二郎は終わったのだった。
あれほどネットで下調べしたにも関わらず、自分が本当に気をつけなければいけなかったことは、店員の尋ねたことにしっかり受け答えし、ラーメンを食べ、丼を片付けてテーブルを拭くことだけだった。こんなの、どこの飯屋に行っても同じの、ただのマナーである。呪文ともいわれるあのコールだって別にどうってことない。「ニンニク入れますか」と聞かれたら「お願いします」と答えれば、気にせずともデフォルトのラーメンが出てくるのだから。だから、もし二郎に行きたくて、でも不安でネットを調べて、こんな辺鄙なTumblrの一記事に辿り着いた人がいるのなら、私はこう答える。「紳士たれ」と。

細かいところを挙げれば、麺が美味しかったなあとか、豚はイエローくらい味が染みてるほうがいいなあとかいろいろあるのだけど、でもラーメン全体としてどうなのかと言われると、二郎は別に格段に美味いというわけではなかった。はっきり言うと、二郎より美味いラーメンはいくらでもある。ことぶきや(寺尾)のごまみそラーメン、三咲屋(大形)の塩ラーメン、三吉屋(駅前)、おもだかや(竹尾)の支那そば、侍元(寺尾)のチャッチャ麺、肉ばか(木崎)、しゃがら(大形)のつけ麺、などなど。でも、二郎を初めて食べて分かったのは、これを他のラーメンと比べて「美味い」とか「不味い」とかで評価すること自体がナンセンスだということだ。語るべきは二郎が「好き」か、あるいは「嫌い」かだ。相対的な評価もない、ただの二択。これを「豚の餌だ」と称する人は、ただ口に合わなかっただけである。「嫌い」だっただけだ。
結局、私はこれを「好き」だと思ったので、近いうちにまた行くことになるだろうと思う。その時も1時間並んで、「ニンニク入れますか」に「お願いします」とだけ言って、10分で食べて店を出るのだ。そして私はその時もまた、言い様のない多幸感に包まれているに違いない。

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この記事を選んだ理由は Tumblr で一番バズったからです。あの ui_nyan 氏にも読んでもらえたのでめちゃくちゃ嬉しかったです。

 あわよくばもう一回バズれって思ってます(無理)。とりあえず「こいつの文章こんな感じなんだな」と思ってもらえれば幸いです。

なお4月14日現在、ラーメン二郎新潟店への2回目の訪問は叶っておりません。